コラム
Column

~リスキリングでキャリアや働き方はどう変わるのか~
「手応え」を感じられるテーマ選びで、業務コストを削減。学習に意欲的な文化醸成にもつながる

<株式会社リンクアカデミー マネージャー 石垣清司 さん>

岸田内閣が掲げる「新しい資本主義」の一環として、5年間で1兆円の予算を投じると発表された「リスキリング」。将来的なIT人材不足が予測されるなか、経営者にとっても、働く人にとっても、注目度が高まっています。

本コラムでは、リスキリングの概要、働く人にとってのメリット、補助金がもらえる制度など、全5回に渡ってお伝えします。第4回は、個人のキャリアアップを支援する総合キャリアスクールを運営する株式会社リンクアカデミーにて、マネージャーを務める石垣清司さんにインタビュー。成果が出るリスキリングのやり方についてお話を伺いました。

 

講座の受講とスキル診断をセットで実施

リスキリングで人気のメニューについて教えてください。

講座の中だと「Excel業務効率化研修」は人気が高いです。

それ以外ですと、企業ごとの業種やフェーズによって変わります。中小企業の場合、ITに限らずビジネススキル全般で社員間に差があることが多く、その是正のため「ロジカルシンキング」「データ分析」といった基礎的な講座がよく選ばれる傾向があります。大手の場合は配置転換に伴って、新しく必要になるスキル学習に活用するパターンも多く、より専門的なテーマの講座を求める傾向があります。

また、講座ではありませんが、自分自身の能力を把握するための「スキル診断」のニーズも大きいです。たとえばExcelスキル診断の場合、実際に条件に沿って管理表をつくるといった実務作業が課題として出され、習熟度が算出される仕組みになっています。100点満点中37点が平均(2023年11月現在)で、若い世代になると平均点はさらに下がります。スキルアップのための講座受講とセットで実施する企業が多いです。

 

学習テーマは、手応えの感じやすさで選ぶ

中小企業の場合、短時間で成果を求める傾向も強いです。どのような育成をおこなうべきなのでしょうか。

学習テーマを、Excelのような「誰もがすぐに使い始められるもの」に絞ると良いのではないかと思います。

リスキリングを考えている企業のなかにはプログラミング言語のようなハイテックなテーマを希望される企業も多いです。しかし、いきなり馴染みのない分野の学習を始めても実務に活用しづらく、途中で挫折してしまう可能性も高いです。

とくに、中小企業の管理職の方々の中には、デジタル領域は若い世代に任せたいと考えている人も多いのではないでしょうか。そんな人たちにも学習を継続してもらうには、デジタルに対する苦手意識を払拭する必要があります。その意味でも、目に見えて効果がわかり、手応えの感じられる題材を選ぶ方が良いと思います。

必ずしもハイテックなテーマを避けるべきだとは思いません。ただし、社員の方々の前提知識やスキルによって効果が大きく左右されるテーマなので、どうしてもチャレンジしたい場合は、初級、中級、上級とレベルごとに受講テーマを分けて、個人が選べる設計にするのも良いと思います。

ただし、繰り返しですが「まずExcelから始める」というのが個人的にはおすすめです。

リスキリングはあくまでも手段であり、その設計に時間をかけ過ぎるのは本末転倒です。何年もかけてようやく納得の行くカリキュラムが完成しても、その頃には時代が変わり、求められるスキルも変化しています。一通り基本的なソフトを扱えるようになってから、カバーできない範囲を補うためにより高度なテーマを学習する、という順番だとスムーズに学習が進むため、おすすめです。

リスキリングへの投資は、具体的にどのような成果につながるのでしょうか。

たとえばExcel業務効率化で言うと、スキル診断で70〜80点獲得できれば作業工数が半分程度に縮まることがわかっています。ただ、20分の作業が10分になっても1日の業務時間が大幅に変わるわけでもなく、経営のインパクトは見えづらいものです。リンクアカデミーでは、学習効果を可視化するため、削減できた工数を時給換算して、費用対効果がわかるようにしています。

 

社員が学び続けるための、土壌をつくる

中小企業がリスキリングで成果を出すために重要な要素について教えてください。

まず何より重要なのは、トップが発信し続けることだと思います。

「ITパスポートの全員取得」「社員の3割をIT人材に」など、どんな目標でもいいのでまずは掲げて、言い続けることが大事です。また、掲げる目標は短期ではなく、1〜2年のスパンで考えることがおすすめです。

学びは一度で終わりではなく、時代に合わせて「学び続ける」ことが重要です。経営のトップ層が育成に対するメッセージを発信し続けることで、社員それぞれが学びに対して貪欲になったり、学びを楽しむようになったり、といった文化の醸成にもつながると思っています。

DXやリスキリングという言葉を必要以上に難しく考えすぎず、まずは身近なツールのスキルアップから目指してもらえればと思います。

 

 

石垣 清司

経歴
2006年 株式会社アビバ入社。
個人向けPCスクールアビバ校舎へ配属後、校舎責任者として従事。
2017年 株式会社リンクスタッフィングセンター長に就任。
2018年 リンクアカデミー人事ユニットへ配属後、社員研修、採用に関わる。
2020年 リンクアカデミー地域長に就任。
メンバーマネジメント、社員教育に従事。
2022年 リンクアカデミーリテラシートレーニングカンパニー営業ユニットマネジャーに就任。
2023年 大学、自治体向け研修部署である、リンクアカデミー大学・文教ユニットマネジャーへ就任。

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