コラム
Column

~リスキリングでキャリアや働き方はどう変わるのか~
リスキリングが女性のキャリアにもたらす「自由」とは。自分の将来をもっとポジティブにとらえるために

<Ms.Engineer株式会社 代表 やまざきひとみ さん>

岸田内閣が掲げる「新しい資本主義」の一環として、5年間で1兆円の予算を投じると発表された「リスキリング」。将来的なIT人材不足が予測されるなか、経営者にとっても、働く人にとっても、注目度が高まっています。

本コラムでは、リスキリングの概要、働く人にとってのメリット、補助金がもらえる制度など、全5回に渡ってお伝えします。
第2回は、女性のためのプログラミングブートキャンプ「Ms Engineer」代表、やまざきひとみさんにインタビュー。リスキリングが女性のキャリアに与える影響をお伝えします。

 女性はリスキリングで収入、時間、場所の自由を手に入れる

まずは、日本女性のキャリアの問題点を教えてください。

総務省が令和4年10月1日に実施した「就業構造基本調査」によると、25歳〜39歳の女性の就業人口は8割を超えています。
また、内閣官房こども家庭庁設立準備室が発表した「こども・子育ての現状と若者・子育て当事者の声・意識」によると、出産や育児を機に一度仕事から離れても、ひと段落した後は、多くの人がまた再開することがわかります。
今の日本では、出産・育児を起点に仕事を完全に辞める人は少ないのです。

しかし、出産育児のタイミングで一度、キャリアアップのペースが緩やかになる構造は変わりません。第1子出産の平均年齢は30歳程ですが、そのタイミングで女性は一度長期休業を挟んで、一度途切れてしまったキャリアを再開するのです。

昨今話題になっているリスキリングが女性のキャリアに与える影響について教えてください。

収入、時間、場所の自由が増やせます。

たとえば、我々が運営するプログラミングブートキャンプの受講者の中には、もともとマーケティング職だった方で、スキルを学んで年収を100万円以上アップさせた事例もあります。
また、メーカーで営業職としてフル出社されていた方がエンジニアへ転職してフルリモートになったり、旦那さんの転勤についていくために仕事を辞めたりした方が、引っ越し先でエンジニアとして働きはじめたケースもありました。

総じて、多くの女性がリスキリングにより人材としての市場価値を高めることで、さまざまな選択の自由を手に入れられています。

 

女性デジタル人材は、企業にとって強いニーズがある

なぜ、リスキリングにより人材としての市場価値が高まるのでしょうか?

大きく3つの理由があります。

1つ目は、これまで獲得した経験や能力と、新しく習得するスキルとの掛け算が生まれるからです。実際に、プログラミングブートキャンプの受講者の一人は、プログラマーとしての実務経験がないにも関わらず、受講修了後すぐに就職先が決まりました。
もともと、地方公務員として窓口業務に携わっていた方で、就職先は地方自治体のDX業務に取り組む会社でした。

企業からすると自治体業務に関する知識やスキルのある人が欲しかったことに加え、デジタルスキルをベースに会話ができる人材はとても貴重だったのです。
同じように、20〜30代の経験がプラスになって就職が決まったり、活躍できたりしている事例は多いです。

2つ目は、企業からすると、すでに社会人経験があることで、教育コストをかけずに済むからです。社会人として基礎的な能力である業務遂行能力や、事業成果を出すためのスキルは、すでに他の会社が育成コストを持ってくれています。
また、企業の中には「キャリアチェンジを目指すマインドを持っていること」自体を高く評価してくれるところも多いです。

3つ目は、女性の目線を増やしたい企業が多いからです。とくに、エンジニア職は業界的に女性が少なく、女性の技術者を増やしたい傾向があります。
多様性のない組織は、中長期で見ると弱いことが明らかになりつつあり、危機感を持っている企業が増えているのです。
とくに、女性のためのプロダクトやサービスを開発している組織は、より良いプロダクトを開発するため女性の採用に積極的です。

時間を確保する「仕組み」をつくって学べ

リスキリングのテーマは何が良いのでしょうか?

今後伸びる分野を見極め、必要とされるスキルを学ぶのが良いと思います。

今で言うと、生成AIのスキルは学ぶことの費用対効果がとても高いと思います。
自分が学びたいスキルや、習得しやすそうなスキルを選ぶ人も多いですが、それらのスキルが必ずしも周りから求められるとは限りません。
リスキリングテーマを決める際は、そのスキルをどれくらいの数の人が求めているのか、市場はあるのか、から考えるのがおすすめです。

学び方のコツも教えてください。

とにかく時間を確保することです。

お金を払って何かしらのプログラムの受講を始めても、時間の確保ができず挫折する方は多いです。自分のやる気や集中力を信用しすぎず、時間を確保する仕組みをつくることをおすすめします。

たとえば、リスキリングを始める前に、毎日どれぐらい勉強をするのか計画を立て、その計画を自分の周りに宣言するのも工夫の一つです。
宣言をしたところで、誰かから監視をされるわけではありませんが、自分にプレッシャーがかかり、サボりたいときに踏ん張れるようになります。
家族や職場の人など、周りの人を巻き込みやすくなることもポイントです。

勉強期間は、ある程度短い期間を設定した方が良いと思います。
1年以上の計画だと、毎日のように湧き出てくる「勉強しなくていい理由」に邪魔されて継続が難しいからです。勉強だけに集中できた学生のころとは違って、仕事をしながら、家庭を支えながらだと、勉強の継続は難しいです。
その前提で、なるべく短期集中で完了するように計画を立てるのが良いでしょう。

リスキリングで、自分のキャリアイメージをポジティブに変える

最後に、キャリアの見直しを考えている方々にメッセージがあればお願いします。

自分で自分の可能性を閉ざさないでほしいです。

これまでたくさんの女性と出会いましたが、自分のキャリアに対してポジティブなイメージを持てない人が多いと感じています。
自社でとったアンケートでは「自分の未来の展望が描きにくい」と感じている方は8割以上でした。そんな方々からすると「収入を上げる」「働き方をよくする」は、夢みたいな話で、ほとんどの人がそんなことできるはずがないと思っています。

ただ私は、閉塞感を感じている全ての女性に経済的な自立や働き方の自由を、もっと堂々と目指してほしいです。
目指す過程で、これまでとは違う視点、自分自身がアップデートされる感覚を得られ、自分のキャリアをポジティブに捉えられるようになります。
そして、実際に復職や転職に成功したときは、圧倒的な自由を手に入れられます。

女性に限った話ではありませんが、人生100年時代において、個々人のキャリアは教育・就業・引退の「3ステージ」ではなく、何度も学び、同時並行で複数の仕事をこなす「マルチステージ」に近づいています。
一度就職すると右肩上がりでステップアップする時代は終わり、何度もしゃがんだり平行線になったりしながらキャリアを形成する時代が始まっているのです。

そんな時代に生きていることを自覚して、自分の理想のキャリアを形成する手段としてリスキリングをうまく活用してもらえればと思います。

 

 

やまざきひとみ

女性のためのプログラミングブートキャンプ「Ms Engineer」代表。「女性にエンジニアという新キャリアを。」を掲げ、新時代の女性のキャリアチェンジを応援し、IT業界のジェンダーギャップ解決を目指す。

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