コラム
Column

~リスキリングでキャリアや働き方はどう変わるのか~
新技術が次々生まれる今こそ、リスキリング!給与アップと理想の働き方の改善を実現する

<株式会社ドットライフ代表、リスキリングナビ編集長 新條 隼人 さん>

 

岸田内閣が掲げる「新しい資本主義」の一環として、5年間で1兆円の予算を投じると発表された「リスキリング」。将来的なIT人材不足が予測されるなか、経営者にとっても、働く人にとっても、注目度が高まっています。

本コラムでは、リスキリングの概要、働く人にとってのメリット、補助金がもらえる制度など、全5回に渡ってお伝えします。第1回は、パートナー探しから事例検索、助成金情報まで、法人のリスキリングを支援する「リスキリングナビ」の編集長、新條隼人さんにインタビュー。リスキリングとは何か、成功事例についてお伝えします。

 

リスキリングで、将来の「圧倒的人材不足」に備える

まず、改めてリスキリングについて解説をお願いします。

リスキリングとは「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること」とされています。

(出典:経済産業省 第2回 デジタル時代の人材政策に関する検討会 開催資料「資料2-2 石原委員プレゼンテーション資料」

定義からもわかりますがリスキリングは個人が実施する場合と、企業が実施する場合とで微妙に意味が異なります。個人の場合は、働く人が自らのお金で勉強をし、従来とは別の仕事を始めることを指します。企業が使う場合は、社員にスキルを身につけてもらい、新しい仕事を任せたり異動してもらったりすることを指します。

なぜ、最近注目を集めているのでしょうか。

2022年10月に岸田首相が「新しい資本主義」の一環として、5年間で1兆円をリスキリングの支援に投じると表明したことが大きな理由です。

政府の狙いは賃金の引き上げで、簡単に言うと、なるべく多くの人たちにリスキリングをしてもらって、成長している、今後伸びる産業で働いて欲しいわけです。したがって現在、個人向けの助成金は、給付対象者の転職が前提になっています。

背景には、大きく2つの課題があります。1つ目は、近い将来訪れるであろう圧倒的な人材不足です。

現在はビッグデータやAIの活用により劇的に産業構造が変わる「第四次産業革命」の真っ只中です。新たなテクノロジーの活用が重視されるなか、経済産業省が発表している資料によると2030年までに、IT人材は45万人不足すると試算されています。深刻な人材不足を補うには働く人一人ひとりのリスキリングが必要です。

2つ目は、技術が人にとって変わるようになることです。

2022年にAIによる自然な文章生成が可能な「ChatGPT」が公開され、大きな話題になりました。いわゆる生成AIと呼ばれるシステムですが、毎日のように新しいものが次々と生み出されています。これまで人が担っていた業務を生成AIが代替するケースも増えており、その傾向は今後加速すると予想されています。

そんな時代で生き残るには、技術に代替されない専門性を身につけるか、その技術を使う側になることが必要です。いずれにしろ、新しいスキルが必要ですので、それを身につけるためのリスキリングが重視されているのです。

 

スキルだけでなく、働き方まで変わる

リスキリングは、個人にどのような影響を与えるのでしょうか。

給与アップはもちろん、理想の働き方の実現も可能になると思います。

例えば一つの事例として、沖縄県では、シングルマザーの方にプログラミングの講義を提供し、エンジニアとして働けるようになってもらう取り組みを行っています。エンジニアになればリモートワークが可能になり、子どもと一緒に過ごす時間を増やせます。

生成AIのような新しい技術は、元々の知識で大きな差がつくわけではなく、ほとんど全ての人が一斉に勉強を始めています。誰であっても、その分野にしっかりと投資ができれば、上位の人材になれる可能性があります。女性のキャリアはライフステージによる変化を受けやすいと言われていますが、閉塞感を感じている方はリスキリングに挑戦することで、現状を打破できる可能性は大いにあると思います。

リスキリングの成功事例を教えてください。

実際に弊社社内で生まれた事例を2つ紹介します。

●リスキリングで報酬面もキャリアアップ、企業の人材採用・育成の費用対効果も改善
1つ目は、とあるデザイナーの事例です。彼女は、もともと消費財メーカーに勤めていて、商品パッケージや冊子など紙媒体のデザインがメインでした。出産を機に退職し、子育てが落ち着いたタイミングでリモートワークが可能な弊社に参画しました。

弊社はwebサービスを提供する企業なので、同じデザイナーとはいえ求められるスキルがこれまでと異なります。そのため、彼女にリスキリングの一環としてUI/UXやwebマーケティングなど、IT領域特有の知見を身に着けるプログラムを受講してもらいました。ポイントは、リスキリング前後で報酬条件などが変わるよう制度設計を行っていることです。経営者視点で考えた場合、UI/UXデザイナーを育成するための投資と、その職能が社内で内製できることによる成果で費用対効果を考えます。または、同じ職種の人を採用する場合のコストと育成コストを比べる場合もあります。いずれにせよ、リスキリング助成金が充実した今の環境では、圧倒的に費用対効果の高い取組だと考えています。

デザイナー本人としても、通常業務に取り組みながら勉強を続け、これからますます市場から求められるであろうスキルが身につき、報酬面も含めたキャリアアップができるということは仕事のモチベーションにつながっています。

●ChatGPTを使いこなすパートタイム従業員が生産性を劇的に改善
2つ目は、バックオフィス業務担当者の事例です。その方も女性で、子育ての都合上、朝9時から昼12時までの3時間のみ稼働するパートタイム勤務という形式の方です。働き始めてすぐは、経理の経費精算や交通費計算といった作業ベースの業務が中心でした。そんな彼女が生産性を高めるため、zoomやslack、Google Driveなどツールの使い方やChatGPTをはじめとした最新ツールの活用の仕方を、社内研修を通して勉強しました。

その結果、限られた時間の中でも多種のツールを使いこなしながら幅広い業務が担えるようになり、営業案件のクライアント対応など、新しい業務も任されるようになりました。結果的に、それまで中途採用の正社員が3人で担当していた顧客の窓口対応を、彼女一人で務められるまでに至りました。もちろん時短勤務のままです。その成功事例をもとに、弊社では小さいお子さんを持つご家庭の方に時短で参画いただけるパートタイムを拡充し、今では同じ小学校のお母さんが3人働く、しかも全員ChatGPTなど最新技術を駆使して生産性高く活躍する、という事例が生まれています。

このように、リスキリングを行うことで、希望する働き方をしながらキャリアアップを実現することができ、企業にとっても生産性を向上し費用対効果を上げることにつながります。

 

新條 隼人

一橋大学商学部卒業後、株式会社ネットプロテクションズ入社。後払い決済事業の営業グループリーダー、新卒採用担当等を経てドットライフを立ち上げ。1000人以上の人生ストーリーを配信し、オンライン・オフラインで交流ができる「人生経験のシェアリング」サービス、another life.を運営。2023年、法人のリスキリングを支援する「リスキリングナビ」サービス提供開始。パートナー探しから事例検索、助成金情報まで、法人のリスキリングを支援する「リスキリングナビ」の編集長を務める。

当サイトに関するお問い合わせ
TEL026-235-7202

受付:平日9:00~17:00
土曜・日曜・祝日、年末年始を除く

講座・技能講習・職業訓練等のお問い合わせは
各開催元にお問い合わせください。

当サイトに関するお問い合わせ
ページ上部へ

SHARE

あなたにおすすめの学び
診断 スタート!